遮蔽材評価用透過率測定ステップウェッジ

酸化ビスマス含有エポキシ樹脂遮蔽成型材料のX線透過評価

<目的>

中性子遮蔽材に炭化硼素(B4C)をエポキシ樹脂に混ぜて遮蔽成型材料としています。同位体ボロン10(10B)は中性子と反応すると478keVの即発γ線が発生します。エポキシ樹脂からは構成元素の水素からは2.2MeVのγ線が発生します。また、ガドリニウム(Gd)の場合には中性子と反応して8MeVのγ線と内部転換電子が発生します。

遮蔽材として中性子が遮蔽できても中性子と反応して発生するγ線に対して遮蔽できていません。特に軽元素の樹脂では線エネルギー付与の大きいエネルギーの低い散乱γ線を防ぐことができません。

有害な鉛材料を使わずにX線を遮蔽する材料として酸化ビスマス(Bi2O3)をエポキシ樹脂に混ぜて遮蔽成型材料について検討していました。そこで、エポキシ樹脂に中性子吸収の炭化硼素と酸化ビスマスを混ぜて成型することで低エネルギーの散乱γ線も遮蔽できる成型材料について検討します。

<まとめ>

有害な鉛に代わり酸化ビスマス(Bi2O3)をエポキシ樹脂に混ぜてX線、γ線の遮蔽体として成型できることを確認しました。

60Coγ線源の測定結果では鉛の厚さtの異なるステップウェッジを用いて実効的な密度吸収係数μen(NISTのデータベース)と理論計算値から求めた密度ρenが実際の密度ρと5%で一致する結果を得ました。この測定体系から、実効的な酸化ビスマス遮蔽体のエポキシ樹脂重量比率に対する含有量ごとの実効的ビスマスの密度ρenを求め、この密度よりエネルギーに対応した遮蔽計算を可能にしました。

He-3検出器による中性子透過試験ではB4Cに酸化ガドリニウムを混ぜた場合、中性子の遮蔽効果が高くなる。しかし、中性子との反応により発生するγ線が多くなり酸化ビスマスを混ぜた場合よりγ線の遮蔽効果は悪いです。 中性子遮蔽材としてエポキシ樹脂に硼酸をベースとして製作するよりも炭化硼素をベースとして製作する方が中性子の遮蔽効果が高く、更に硼素の中性子との反応により発生する即発γ線は酸化ビスマスを入れることで低エネルギーのγ線を遮蔽する効果があることが確認されました。特にカメラ機器など中性子だけでなく線エネルギー付与の高い低エネルギーγ線からの遮蔽には炭化硼素に加えて酸化ビスマスを加えたほうが良い結果を得ることができました。

  • 評価用に製作したステップウエッジ